栓縮杢被蓋くり物 、3点完成

 

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セン(栓)という国産の広葉樹の大木に杢の生じた材料で、角形の被蓋のくり物を3点こしらえました。単純な縮杢ではなく、とくに蓋の上面はキルテッド(布状のしわ杢)といったほうが適切なような杢で、それがうねった年輪とからまりあうようにしてじつに複雑幽玄な表情を見せています。

箱物というとほとんどの場合薄手の板を組み合わせて作った指物(さしもの)ですが、この3点は厚手の板を蓋も実も両方とも深く掘り込んで箱状にしたものです。もちろん手間も材料も指物よりはるかに要しますし、技術的な難度も高いのですが、それだけの当てはあり見ごたえもあると思います。

大きさは長さ×奥行×高さで左から、No.501が153×153×55mm、No.502が182×132×55mm、No.503が157×111×56mmです。実のほうの深さは32〜33mmあり、この手の箱物としてはわりあいあるほうなので容器としての実用性も高いでしょう。塗装は無着色の二液型ポリウレタン塗料を7〜8回ほど刷毛で施し半艶(5分消し)仕上げとしています。写真は撮影の関係ですこしぎらついた印象がありますが、実際にはもうすこししっとりと落ち着いた感じです。全体が艶ありでは品がなくなるので、内側は同塗料の全消し(艶無し)仕上げです。

下にそれぞれの品を多方面から眺めたようすの写真をあげますが、見る方向や角度によってぜんぜん違った器のように見えます。これは、紋様が単なる表面的なものではなく、材料内部の構造的な複雑さに起因しているからです。無着色の透明塗装ですからミクロ的な表面の凹凸がいろいろ作用していることと、木は数十ミクロンくらいまで薄くするといくぶんか光が透過して見えるのですが、外光は器の表面だけでなく材の内部まで入ってから反射してくる光もあります。その反射光は材料の構造・組成によってどの向きにどの程度の強さで反射するか規制されるために、見る向きによって自分の目に入って来る光が微妙に異なります。いわば偏光レンズを通してものを眺めるようなものです。

杢を用いた製品のおもしろさは、同じ品物でありながら万華鏡にも似た多彩な表情を見せてくれるところにもありますね。箱ですからなにかを入れておく道具としてももちろん使えるのですが、杢の表情自体を楽しむというおもしろさもあると思います。実のほうも同一原木からの木取ですが、こちらは杢の入っていない素直な柾目の部分でこしらえているので、まったく異なる印象であることにも注目していただければと思います。

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No.501 栓縮杢方形被蓋くり物 サイズ153×153×高さ55mm、実の深さ32mm 売切れ

 

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No.502 栓縮杢角形被蓋くり物 サイズ182×132×高さ55mm、実の深さ32mm

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No.503 栓縮杢角形被蓋くり物 サイズ157×111×高さ56mm、実の深さ33mm

 

上の3点は一枚の板から連続的に木取りしてこしらえたものですが、最初のNo.501はすでに売却済となりました。下塗りの段階でお見せしたところ強くご購入を希望されたことや、大のお得意様であることもあって早々と売約となりました。本来は今年10月に行う予定の個展のために作った「一品もの」なので、先にみな売れてしまっては困るのですが、No.502と503も「仮予約」というかたちでのご注文は受け付けます。ただし、展示予定の画廊との契約や、他の出展品とのかねあいもあるので、正式な小売価格は展示の直前にならないと決まりませんし、お渡しするのは展示終了後となります。それでよろしければメールにて個別にお問い合わせください。製作原価にもとづく最低価格やおおよその予定小売価格等をお知らせいたします。

 

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