コーヒーブレーク 65 「頭蓋」

 

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短日の光の腸となる自家用車

たいへん痛ましいことだが、ときおり猫や狸が車に轢かれて道路に横たわっていることがある。なかには踏みつぶされて内蔵が露出していることもあり、うす桃色の紐のようなものが長々と胴体から飛び出している。小腸だろうか。/うちの猫はずっといわゆる「家猫」で、室内でだけ飼うようにしている。猫エイズと俗に呼ばれるような致死性の感染症や、ノミやダニといった寄生虫などを防ぐことや、交通事故に遭うことがないようにするためだ。そのこともあって他所で、往来の激しい道路のそばなのに外猫として平気で飼われている猫を見かけると悲しくなる。

枯れ木とも冬木とも見えて冬の旅

春から夏、秋にかけては、その樹木が枯れ木であるのかどうかは、もちろんたやすく判別できる。しかし冬になり葉をすっかり落とした広葉樹の場合は、一見しただけではわからないことがある。まして距離があればなおさらだ。/私はずっと昔、鈍行列車で東京と郷里とを往復することがときどきあり、9〜10時間もの間通路に立ったまま、あるいはほとんど垂直の背もたれのボックス席に座っているのは苦痛ではあったが、すこし空いてきた席から窓外の景色を眺めるのはとても好きだった。毎回ほとんど同じ路線なのに何回見ても飽きるということはない。ことに冬期は樹々が裸になり森林が透けて見えるので、そこの地形や、樹々の向こうの遠景もよく見えた。やや開けた場所でははるか遠くに雪をいだいた高山が姿を現すと、それが視界から消えるまでずっと凝視し続けていた。

いつまでも暮れなずむ頭蓋や十二月

冬は日が暮れるのがじつにはやい。ことに雨天のときなどは、午後3時になろうかというような時刻からすでにあたりに闇が立ちこめ始めている。明度センサーがついているのだろう、街灯がはやくも灯っている。その一方で私の精神は明滅をくりかえし、いつまでも沈潜することがない。

 

(※ 写真は、ジオパーク関連の研修で秋田県湯沢市に先月末に出かけたときのもの。両関というブランドの酒をつくっている酒造会社の酒蔵だ。平地でも積雪が1.5〜2mほどあるそうなので、しっかりとした雪囲がなされている。)

 

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