それほど珍しい植物ではないものの生息は偏在していて、たまたまそこに遭遇しないとまず出会えないという草木があります。私にとってはキランソウ(Ajuga decumbens)もそのひとつ。シソ科の多年草で、本州・四国・九州に産し、春先に地面に這うように根生葉を広げ、濃紫色のちょっと変わった形の花を咲かせます。全体に粗めの毛が生えていることや、一塊になって地面をくまなく覆うように咲くことからか、別名をジゴクノカマノフタといいます。高さは5〜15cm、花の大きさは1cmくらい。
これは鳥海山麓の某所でみかけたものですが、道ばたのその1カ所だけに20〜30cmほどの小群落が10個ほどあっただけで、その前後周囲やほかにはまったくありませんでした。もちろん目を皿にようにして徹底的に調査すればもっとあるのだと思いますが。
キランソウはハンディな植物図鑑にもほぼ必ずのように登場するふつうの植物ですが、野の花を意識的に撮影するようになってからもなかなか出会えず、初めて見つけたのは5年以上も経ってからです(下の写真の場所とは別)。それも林道に車を走らせていて、ふと目をやった道ばたの色合いがそこだけ1カ所他とちがっていることが気になって、車をひきかえして確かめたことによります。
同じシソ科のジュウニヒトエ(Ajuga nipponensis)も同様な植物で、ある所には点々とあるものの、他ではまったく見かけない花ですね(あくまでも私の場合は、です。きっと観察力が足りないせいだと思います)。