両刃小刀

小刀はふつう片刃でできていますが、両刃の小刀というものもあります。写真のものがそれで、長さは215mm、刃渡り52mmですが、厚みは3.6mmとやや厚めにできています。鋼を真ん中、その両外側を軟鉄のサンドイッチ構造で、こういう刃物を割込刃というようです。銘は包春。

両刃にも二通りの意味があって、ひとつは刃付けが峰に対して左右両側に付けてあるもの。ナイフや斧などは多くがこの両刃で、刃先に近いほどわずかながら鈍角にしてあるため刃こぼれしにくくなります。いわゆる「はまぐり刃」に仕立てるわけです。もうひとつは身の平に対して両側に刃が付いているものです。槍の穂先などのイメージですね。

写真の小刀の場合は前者の意味での両刃ですが、左右それぞれの刃付けは丸みは極力もたせずに一定の角度に平らに研ぎ上げます。丸みをもたせるよりも切れ味が鋭くなることと、その平らなしのぎ面が木材等を切削する際のガイドとなるためです。したがってこのような両刃の小刀は刃先の断面は鋭角の二等辺三角形になります。

小刀は木工の作業では、通常のノミやカンナなどが入らないような細かいところの切削に用いますが、年輪や導管の向きなどをよくみて削らないと逆目がたってしまいます。そのときは刃先を逆に向けて切削することになりますが、片刃の小刀の場合は刃裏と刃表とが非対称のために非常にやりづらくなることがあります。刃裏の広すぎる刃身が材料に当たってしまう、といったことです。その点、両刃の小刀であれば裏表が対称のため具合がいいのです。

ただ両刃の小刀はわりあい珍しいのではないかと思います。少なくとも私は自分が持っているもの以外では、他でほとんど見かけたことがありません。小刀はぜんぶで5本ありますが、その中でこの両刃の小刀は出番はいちばん少ないながら、いざというときにはなくてはならない存在です。

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