ノギスはドイツ語でNonius、英語ではVernierといいます。対象物にあてがって0.05mmくらいの精度で寸法を測定する測定器です。木工の作業でも精密度をとくに必要とするホゾ組や溝ばめといった加工では必須といっていいくらいに使用します。
写真はそのノギスを保護するためのクルミ柾目板の自作のケースです。現物を置いて墨を取り、トリマーでその墨線よりわずかに大きく彫り込んでいます。中央の円はノギスをケースから取り出しやすくするためのもの。ノギスを購入するとたいていビニールレザー製といった簡易なケースが付いてきますが、それではこの精密な測定器を保護するには十分ではありません。かといってあまり頑丈すぎるケースに密封してしまっては使用するときにめんどうです。この自作のケースの場合は開放式なので、測定するとき以外はそのつどノギスをこのケースに戻すというのが基本的使い方です。
ノギスに限りませんが、こういった精密機器は一度でも床に落としたり材料に強くぶつけたりすると狂ってしまう恐れがあるので、同じ職場内であっても他者と貸し借りすることはありません。
ノギスの各部の名称と用途ですが、左上の尖ったところがクチバシといって穴や溝などの内寸を計ります。その下方のすこし長い三角はジョウといい、外側の寸法を計ります。本体=主尺は通常の1mm単位の目盛が刻まれたスケールですが、これとは別に39mmを20等分した目盛(一目盛り1.95mm)が刻まれた副尺(vernier)が主尺を上下から挟み込むようにセットされてあり、副尺を左右にスライドして主尺と副尺との目盛がいちばん近いところを読み取ることによって1/20mm、すなわち0.05mmの精度で寸法を測ることができます。また主尺と副尺の段差を利用することで対象物の穴の深さや段差を計ることができます。前者は主尺の右端から、副尺をスライドしたぶんだけ細めのスケールが出てくるようになっていて、この先端が穴等の底に当たるまでくり出すことによって穴の深さを計測します。これをデプスバーといいます。
写真のノギスは有効長150mmで、測定機器の大手メーカーであるミツトヨ(Mitutoyo)製です。定価では5700円ほどと、いくらか値段ははりますがしっかりした作りで信頼できます。液晶で数値をデジタル表示するノギスもありますが、それぞれ一長一短があるので適宜近い分けています。